ブラックバイトの特徴と違法性とは?困ったときの相談先を紹介

学生という弱い立場につけこんで、不当な労働条件を押し付けるブラックバイトが社会問題になっています。
ブラックバイトのせいで学業に支障を及ぼすケースもあります。
国も、このようなブラックバイトに対して注意を促しています。

ブラックバイトの特徴と違法性、相談先について、弁護士が解説します。

ブラックバイトとは?

「ブラックバイト」は法律上の用語ではありませんが、一般的には、「学生生活に支障をきたすような態様で働かせるアルバイト」のことをいいます。
ブラックバイトでは違法行為が行われていることも少なくありません。

ブラック企業というと企業対社員というイメージが強く、アルバイトに関してはあまりフォーカスされることがありませんでした。しかし、アルバイトに対しても、劣悪な労働環境で働かせたり、賃金に関して企業としてあるまじき行為を取る企業が少なからずいることから、ブラックバイトという造語が生まれました。

ブラックバイトの10個の特徴

ブラックバイトの特徴を紹介します。
ご自身が働いているアルバイト先に当てはまるところがないか確認してみましょう。

参考:アルバイトを始める前に知っておきたいポイント|厚生労働省

(1)労働基準法が守られていない、守る意識がそもそもない

企業よりも立場が弱くなりがちな労働者を守るために、「労働基準法」という法律があります。
労働基準法では、

  • 賃金や労働時間の明示
  • 賃金の支払いに関する原則
  • 強制労働の禁止

などが設けられています。
しかし、その労働基準法が守られていない企業や、そもそも守らなければいけないという意識すら持っていない企業もあります。
そういった企業はブラックバイトと言えます。

(2)賃金(バイト代・給料)の未払い、支払い遅延

賃金(バイト代・給料)の支払いに関して、通常の企業であれば一番気を使ってトラブルが起きないように気をつけているものです。
それにもかかわらず、賃金の未払いや支払い遅延が頻繁に起こっている場合、ブラックバイトの可能性が高いです。

(3)サービス残業の強要、断れない雰囲気・文化

賃金が支払われない残業(いわゆるサービス残業、サビ残)を強要されたり、サービス残業を断ることのできない雰囲気や文化があるバイト先はブラックバイトの可能性が高いです。
休憩時間に、客待ち(休憩時間に客が来たら対応をさせられる業務)や電話当番などをさせられる場合も、ここに含まれます。

(4)シフトの強要、希望が通らない

以下のようにシフトの強要などがある場合にはブラックバイトの可能性が高いです。

  • 試験の日など出勤できない日に断りなくシフトを入れられる
  • シフトの希望を出しているのに希望が全く通らず、バイト先の都合でシフトを決められる

(5)バイトを辞めさせてくれない

「辞めたい」と伝えても、人手不足などを理由に辞めさせてくれない場合は、ブラックバイトの可能性が高いです。
「代わりの人を見つけてこないと辞めさせない」「人手が減ってお店が回らなくなるから損害賠償を請求する」などと言って、アルバイトを脅すようなことをすることもあります。

一般的には「1~2ヶ月前に退職の申請をすれば退職できる」と雇用契約書(労働条件通知書)や就業規則に書かれていることが多いです。

また法的には、期限の定められていない雇用契約の場合は、原則として14日前までの申請で退職することが可能です(民法第627条1項)。

期間の定めがある雇用契約(1ヶ月契約など)の場合、原則として、期間が満了しないと退職できません(民法第628条)。

ただし、期間の定めの有無にかかわらず、会社と労働契約する際に明示された労働条件と、実際の労働条件が異なる場合は、直ちに退職できます(労働基準法第15条第2項)。

このほかにも例外的に、原則的な退職時期よりも早く退職することができる場合がありますので、詳しくは専門家にご相談ください。

(6)労災保険への未加入

業務や通勤のためにケガや病気をしたときのために、原則として、会社はアルバイトを含む全ての従業員に対して、労災保険への加入手続きをする義務があります(個人経営のごく小規模な農林水産事業など、労災保険の加入が義務付けられていない事業も一部あります)。

「アルバイトに労災保険はない」などと言われた場合は、ブラックバイトの可能性があります。

(7)各種ハラスメントが横行している、注意されない

セクハラやパワハラ、モラハラなどの行為が職場内で横行しており、それを上司や管理職などの上司が目にしても全く注意されない職場はブラックバイトと言えます。
ハラスメントやコンプライアンの遵守が叫ばれる現代において非常にセンシティブな企業が多いにも関わらず、ハラスメントが横行しているのはわかりやすいブラックバイトの特徴です。

(8)勤怠管理(タイムカード)がアバウト

本来は1分単位での打刻を求められるタイムカードが、勤務するたびに「○分以下は切り捨て」と設定されていたりするのもブラックバイトの特徴です。

(9)当日の急な呼び出しが多い、断れない

当日に欠勤が出て代わりに出勤できる人を探すのは「アルバイトあるある」ではあるものの、その呼び出しの頻度が高かったり、断ることのできない雰囲気(断ると小言を言われる、シフトに入れてもらえなくなるなど)がある職場がブラックバイトのことが多いです。
例えば、当日の急な呼び出しを断ると

  • 小言をいわれる
  • シフトに入れてもらえなくなる
  • 無視される

等の場合はブラックバイトの可能性があります。

当日欠勤が多いのも、面接が適切に行われていなかったり、出勤することが嫌になってしまうような職場環境に原因があることも多く、そういった面でもブラックバイトと言えます。

(10)求人内容と条件や仕事内容が違う

次のように求人内容と条件や仕事内容が違うのもブラックバイトの特徴です。

  • 1ヶ月と記載のあった試用期間が、合理的理由もなく、ずるずると延長され続け、その間の給与が少なくなっている
  • 応募した職種と違う仕事をさせられる
  • 待遇が求人内容と異なる

実は違法のブラックバイトあるある

これまでにご紹介した中にも違法のものはあるのですが(サービス残業・退職させないなど)、更に「ブラックバイトあるある」の違法行為について紹介します。

(1)制服などの費用や罰金の給与天引き

次のようなものを給与から一方的に天引きすることは原則として違法です。

  • 制服の費用を最初の給料から天引き
  • 会社に対して損害を与えたという理由で罰金の天引き
  • ノルマ未達による自身での買い取り相当額の天引き

給与は労働基準法第24条本文によって、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められています。
給与から天引きが許されるのは、次の場合のみです(同条但書)。

  • 法令に別段の定めがある場合……給与所得税の源泉徴収、社会保険料の控除、財形貯蓄の控除など
  • 「事業場労働者の過半数で組織する労働組合」、これがないときはその過半数を代表する者」との書面での協定で定められている場合

この例外的事由にあてはまらないにもかかわらず、一方的に罰金名目などで給与から天引きすることは違法になるのです。

(2)強制的なミーティング、清掃業務が労働時間に含まれない

強制的なミーティングや清掃業務などが労働時間に含まれず、それに対して相応の賃金が払われていないのは違法となります。

「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」については、労働基準法上の労働時間にあたり、この労働時間に対して、使用者は相応の賃金を支払う義務があります(三菱重工業事件 最高裁第一小法廷判決平成12年3月9日 民集54巻3号801号)。

強制的なミーティングや清掃業務などは、通常、この労働時間にあたります。

(3)有給休暇がもらえない

次の条件をいずれも満たす労働者は、年次有給休暇が与えられます(労働基準法第39条1項)。

  • 雇用関係あり
  • 入社してから6ヶ月以上継続して勤務している
  • 全労働日の8割以上出勤している

アルバイトの方であっても、上記条件を満たせば年次有給休暇は付与されます(。ただし下記の通り勤務日数の条件があります)。

アルバイトの方(※)に付与される有給休暇日数は次の通りです。

※ここでいうアルバイト従業員とは、

  • 週30時間未満勤務
  • かつ週4日以下勤務(週以外の期間によって労働日数を定めている場合には年216日以下勤務)

の従業員をいいます。
この勤務時間と日数を超える勤務をしている場合は、有給休暇の付与日数が下記とは異なります(さらに多くなります)。

【アルバイトの方の有給休暇の付与日数】

週の所定労働日数1年間の所定労働日数
(週以外の期間によって、労働日数を定めている場合)
雇入日からの勤続日数に応じた有給休暇の日数
6ヶ月勤務1年6ヶ月勤務2年6ヶ月勤務3年6ヶ月勤務4年6ヶ月勤務5年6ヶ月勤務6年6ヶ月以上勤務
4日169~216日7日8日9日10日12日13日15日
3日121~168日5日6日6日8日9日10日11日
2日73~120日3日4日4日5日6日6日7日
1日48~72日1日2日2日2日3日3日3日

アルバイトだからといって、勤務期間に関係なく一律に有給をもらえないのは違法です。

参考:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省

ブラックバイトの相談・未払いの賃金の相談はどこにすればいい?

ブラックバイトの相談・未払いの賃金については、公的な機関や弁護士に相談するといった方法があります。

(1)総合労働相談コーナー

ブラックバイトのトラブルは、全国にある労働局や労働基準監督署の中に設置されている「総合労働相談コーナー」に相談をすることができます。

総合労働相談コーナーは、幅広い労働問題について相談に乗ってくれます。
労働基準法などの法律違反の疑いがある場合は、労働基準監督署などに取り次いでもらうことができます。

また、総合労働相談コーナーでは一部の労働問題につき、助言、指導、あっせんの申し出も受け付けています。
助言・指導は、都道府県労働局が、紛争当事者に紛争の問題点を指摘したり、アドバイスしたりするというものです。
助言・指導で解決できない場合は、あっせんの手続きに移ることもできます。

あっせんとは、「紛争調整委員会」が行うものであり、紛争当事者(パワハラでいえば加害者と被害者)の間に、労働の専門家である、あっせん委員が介入して、話し合いをする制度です(助言・指導を経なくともあっせん手続きを利用できます)。
無料で行うことができ、裁判に比べれば簡易迅速にできます。
相手が話し合いに応じなければ合意がないまま終了してしまいます。
また、合意には判決と同じ効力はありません。
そのため合意が守られない場合は、別途、公正証書を作成したり、裁判をしたりするなど、強制的に合意を守らせるための手段を取る必要があります。

参考:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

(2)労働基準監督署

ブラックバイトのトラブルが、労働基準法など一定の労働関連の法律に違反すると疑われるときには労働基準監督署へ相談・申告することができます。

労働基準監督署は、その管轄内の企業などがきちんと一定の労働関連の法律を守っているかどうかを監督する機関です。

労働者からの申告を受けた後、

  • 労働基準監督官による使用者からの事情聴取
  • 事業場への立ち入り調査

などを行い、労働者・使用者双方の主張の整理・確認をしてくれたりすることがあります。

また、労働関連の法律違反の事実が確認されれば、使用者に対し是正や改善の指導などがされることがあります。

ただし、労働基準監督署は、労働者から相談を受けたからと言って、当然に、調査等の措置を取る義務を負うわけではありません(東京労基局長事件(東京高裁判決昭和56年3月26日))。

労働基準監督署に申告に行く際、労働関連の法律違反をしている証拠を持参すると、労働基準書に動いてもらいやすくなりますので、申告の際は証拠を持参することをおすすめします。

なお、労働基準監督署の取り扱う労働問題は限定されており、相談内容によっては対応できないこともあります。
また、労働基準監督署は、違法状態を是正することが目的であって、個人の紛争を解決することが目的ではないことに注意が必要です。
そのため、労働基準監督署と、申告をした労働者との間で、目指している解決の内容が異なることもあります。

参考:都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省

(3)弁護士

ブラックバイトのトラブルは、弁護士に相談することもできます。
労働基準監督署などの公的機関は中立的な立場であるため、必ずしも相談した労働者の味方になるというわけではありません。
それに対して、弁護士に依頼すれば、代理人として労働者の味方になって動いてくれます。
また、弁護士には、公的機関のような管轄がないため、労働問題に対して広く対応することができます。
公的機関との最も大きな違いは、今まさに直面している個別の労働問題に対して、依頼者の味方となって、相手方との交渉や訴訟提起等を行ってくれる点です。
弁護士に依頼すると、基本的に費用はかかりますが、個別の労働問題を解決するには、有効的な手段と言えます。
相談だけであれば無料という弁護士もいます。
ホームページや電話などで相談料などの費用を確認の上、まずは相談してみるとよいでしょう。

【まとめ】ブラックバイトでお悩みの方は専門家に相談しましょう

ブラックバイトで悩まされている時、まずは身近な人や総合労働相談コーナーや弁護士などに相談して打ち明けることで、一人で抱え込まずに済みます。

アディーレ法律事務所では、

  • 退職の手続きを本人に代わって行う「退職代行」
  • 未払い残業代の請求

を取り扱っています。

退職できなくて悩んでいる方や、サービス残業でお悩みの方は、アディーレ法律事務所へご相談ください。

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この記事の監修弁護士
髙野 文幸
弁護士 髙野 文幸

弁護士に相談に来られる方々の事案は千差万別であり、相談を受けた弁護士には事案に応じた適格な法的助言が求められます。しかしながら、単なる法的助言の提供に終始してはいけません。依頼者の方と共に事案に向き合い、できるだけ依頼者の方の利益となる解決ができないかと真撃に取り組む姿勢がなければ、弁護士は依頼者の方から信頼を得られません。私は、そうした姿勢をもってご相談を受けた事案に取り組み、皆様方のお役に立てられますよう努力する所存であります。

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